サステナビリティは、世界経済が長期的に健全であるための基本的な要素です。これは、運用する外貨準備金の国際的な購買力を維持・向上させるというGICのマンデートにとっても不可欠なものです。
サステナビリティについて強力な取り組みを実践している企業は、長期的に優れたリスク調整後リターンを提供すると考えられます。この関係は、市場の外界が評価され、規制当局、企業、消費者の意思決定に組み込まれるにつれて、長期的に強化されると考えています。
私たちは、投資と事業活動のプロセスにおいて、サステナビリティに対する全体的かつ長期的なアプローチをとっています。投資は、特に短期的には、異なるサステナビリティ目標の間でトレードオフを伴うことがあります。GICは、当社が事業を展開する産業や市場の多様性、そして企業が移行するために必要なトレードオフと時間を認識した上で、サステナビリティを統合しています。
GICは、投資と事業を通じて、ネット・ゼロ・エコノミーへの世界的な移行に取り組んでおり、実体経済にプラスの影響を与えることに焦点を当てることが重要と考えています。そのためには、特定の産業部門から機械的に売却するよりも、長期的な持続可能性に向けた企業の移行に積極的に関与し、支援することがより建設的だと考えています。例えば、投資先企業の気候変動対策に積極的に関与したり、グリーンテクノロジーの導入や拡大に資金を提供したりすることが挙げられます。このようなアプローチは、長期的には実体経済においてより多くの価値と有益な結果を生み出すでしょう。
サステナビリティは、GICの経営における最優先事項です。GICの取締役会は、投資戦略委員会、投資委員会、リスク委員会などの委員会とともに、GICのサステナビリティのアプローチと、気候関連のリスクと機会に関する経営陣の検討状況を監視しています。
GICのサステナビリティ委員会は、投資部門、リスク部門、コーポレート部門のシニアリーダーで構成され、サステナビリティのフレームワークを実施し、環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題を監視し、対応することを任務としています。委員会は、グループ執行委員会と取締役会との間で意見交換を定期的に行っており、取締役会の動向やポートフォリオに影響を与え得る新たな問題や、機会の獲得、ポートフォリオの保護、企業の卓越性とパートナーシップなどの追求に焦点を当てたサステナビリティに関する枠組みの継続的な実施について、検討しています。
サステナビリティの問題を深く研究し、投資プロセスや企業全体への統合を推進するために、委員会をサポートするためのサステナビリティ専門部署が設置されました。
GICは、規制当局、消費者、企業が持続可能性の問題にますます取り組むようになるにつれ、新たな投資機会が生まれると考えています。 これらの機会を捉えることを目指して、私たちはサステナビリティを投資プロセスに組み込み、投資先企業のサステナビリティ問題に積極的に取り組み、革新的な低炭素ソリューションやその他のサステナビリティのトレンドに投資を行います。
私たちは、投資先を保護する目的で、既存の投資先にサステナビリティの重大なリスクがないか定期的にスクリーニングし、さまざまな気候シナリオや炭素価格予測に対してポートフォリオのストレステストを行っています。また、より大きなサステナビリティ・リスクにさらされる企業や資産に対しては、追加のデューデリジェンスを実施し、それに応じて長期評価とリスクモデルを調整します。
組織としてどのように持続可能な運営を行うかは、投資方法と同様に重要です。私たちは、ビジネスパートナーに持続可能な行動に対する明確な期待を伝え、エネルギー効率を高めるために資源の使用を管理し、すべてのオフィスでの業務においてカーボンニュートラルを維持することによって、これを実現します。
長期投資家であるGICは、投資家と企業が長期的な価値を向上させるために、より良い意思決定を行うためにも、サステナビリティに対する取り組みが発展することを歓迎しています。サステナビリティは進化し続ける分野であり、GICを含むすべての組織は、新しい基準が開発されるなか、互いに学び合うことで利益を得ることができます。GICは、以下の業界プラットフォームを通じて、各アセットオーナーと協働しています。
ブリティッシュランドは、世界の脱炭素化目標をサポートする上でデベロッパーが果たす重要な役割を、GICのパートナーとして見事に実証した企業です。GICは、2014年にブロードゲート・エステートの株式を取得して以来、ブリティッシュランドとの共同事業として、同エステートにおける新規開発や、主要な付加価値の創出機会、そして場づくりの構想における評価について、助言を行っています。
2020年11月には、ジョイントベンチャー初のネット・ゼロカーボンの建築となる100リバプール・ストリート(100LPS)を竣工させ、BREEAMでは「Outstanding」を、Wiredスコアでは「Platinum」の環境認証を獲得しました。さらに、100LPSは、公認建築家名誉組合による賞「シティ・オブ・ロンドン・ビルディング・オブ・ザ・イヤー2021」を受賞しています。
100LPSは、サステナビリティを念頭に置いて開発されており、今日における持続可能な低炭素型開発のモデルとなっています。低炭素化を実現するために、鉄骨や基礎、コンクリートなど既存の構造物の50%を維持または再利用する設計が行われました。また、完成したビルの運用効率を最適化するため、ビルの性能をリアルタイムで監視するスマートシステムを導入し、水需要の40%を満たすために雨水や中水を利用するリサイクルシステムが構築されるほか、電力とガスの100%が再生可能エネルギーで供給される予定です。また、残留排出量については、チベット、メキシコ、カンブリア、スコットランドでの土地回復・植林プロジェクトなど、自然を基盤とした解決策(NbS)によりオフセットされています。
ACエナジーは、フィリピン最大のコングロマリットであるアヤラグループ傘下の上場エネルギー企業です。GICにとっては長年のパートナー企業であり、フィリピン、ベトナム、インドネシア、インド、オーストラリアで約4GWの発電容量を保有しています。同社は、自社開発またはパートナーとの共同開発を進めており、2025年にかけて再生可能エネルギーのパイプラインを18GWまで拡大させる予定です。また、2022年7月現在、同社の発電容量に占める再生可能エネルギーの割合は87%に上り、この地域で最も高い水準にあります。
同社の目標は、自然エネルギープラットフォームの上場企業として東南アジア最大規模となり、2030年までに自然エネルギーの発電容量20GWを達成することです。2021年、同社は2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという宣言を発表しました。これは、2040年までに残りの石炭火力発電所を早期廃止し、2025年までに同社の発電ポートフォリオを100%再生可能エネルギーに移行させることを意味しています。
GICのACエナジーへの投資は、同社の再生可能エネルギープロジェクト開発および潜在的な買収に充てられ、グリーンインパクトを加速・拡大させることを可能にするものです。この投資に対する私たちの自信は、同社の多様な再生可能エネルギー資産と収益性の高い成長実績によって裏打ちされています。GICは、同社がこの地域において、火力発電からクリーンで持続可能なエネルギーへの転換を実現するために、優位なポジションにあると考えています。
クライムワークスは、大気中の二酸化炭素を恒久的に除去することで、企業や消費者に気候変動を食い止める力をもたらしています。回収された二酸化炭素は、地中に戻され何百万年にもわたって安全に保管されるか、カーボンニュートラルな燃料や材料など、気候変動に配慮した製品にアップサイクルされます。同社は2009年の設立以来、直接空気回収(DAC)技術を開拓し、2021年9月に世界最大の商用DACおよび貯蔵プラントを立ち上げました。アイスランドにある同社のオルカ工場は、年間4,000トンのCO2を大気中から回収する能力を有しています。また同社は、再生可能エネルギーだけを使用し、工場の建設過程で排出された炭素を除去しています。
GICは、炭素除去市場の成長と成熟に伴い、クライムワークスのプラントが数百万トンの容量に拡張することを支援します。同社は、この資金をもとに、一流の人材を集めるチーム強化にも取り組む予定です。
米国に拠点を置くディヴァートは、食の価値を守ることを使命とするテクノロジー企業です。同社は、食品廃棄物をなくすための革新的なソリューションを開発し、食品バリューチェーンの変革に取り組んでいます。食品ロスを防ぎ、食べられる食料を回収し、食品廃棄物を埋立地から転換するための持続可能なインフラを構築しています。
GICの出資は、同社の米国内での事業拡大を支援するために使われる予定です。今回の出資は、アルバートソンズ(Albertsons)やターゲット(Target)といった全米の主要な食料品店との強い関係に加え、環境に優しく費用対効果の高い廃棄物処理法への需要を促進する規制や、ESGの追い風に裏打ちされたものとなっています。
デューク・エナジー・インディアナ(DEI)は、米国最大級の電力会社であるデューク・エナジーの子会社です。DEIは、インディアナ州内に発電、送電、配電施設を所有しており、同州最大の電力会社として、87万人以上の顧客にサービスを提供しています。GICがDEIへの出資を発表した2021年当時、DEIは電力の大半を石炭火力発電所に依存していました。
DEIは、二酸化炭素削減目標を達成し、発電設備を多様化させるため、再生可能エネルギーや天然ガス火力発電への投資を増やし、石炭火力発電から段階的に撤退する予定です。2021年末、DEIは、従来の計画より数年早い2035年までに、すべての石炭火力発電施設を廃止するとともに、再生可能エネルギー投資を従来比の3倍に増やすという最新の計画を発表しました。ガス化石炭と天然ガスの両方を使用するエドワーズポート発電所では、目標時期までに石炭ガス化炉を廃止させるか、炭素回収技術を加える予定です。
デューク・エナジーは、こうした中期的な炭素削減目標に加え、2050年までにスコープ1、スコープ2、そして一部のスコープ3の排出量をネットゼロとすることを計画しています。また、DEIは、よりスマートかつ復旧性に優れ、環境に配慮した送電網を実現するため、送電および配電への投資も行っています。
インターコンチネンタル・エナジー(ICE)は、グリーン燃料の専門企業として業界をリードしています。ICEは、オーストラリア、オマーン、サウジアラビア各政府と、3つの世界最先端の開発にも取り組んでおり、大規模なグリーン燃料プロジェクトのパイオニア企業です。
ICEのプロジェクトは、日中は豊富な太陽光に恵まれ、夜間は強い風が吹く沿岸の砂漠地帯に位置し、再生可能エネルギーを使って水を電気分解し、最小限のコストで最大限のグリーン燃料を生成します。このポートフォリオにより、年間1,000万トン以上のグリーン水素を製造することが可能になります。ICEは、各ハブ周辺でのハイテクエコシステムの開発など、国内における最大限の利益を確保するために、現地の有力パートナーと協力しています。ICEのポートフォリオは、年間2億トン以上の二酸化炭素を相殺し、10万人以上の良質な直接および間接雇用を創出することが期待されています。
ミオテックは、サステナビリティ・データとテクノロジーのプロバイダーであり、人工知能を活用し、二酸化炭素排出、エネルギー、ESGといった課題の解決に取り組む企業です。同社のデータターミナルは、ポートフォリオや資産のリスクを総合的に評価するために、中華圏や東南アジアに焦点を当てたグローバルなESGデータセットを提供しています。また、同社は、持続可能性データレポート、エネルギーおよび炭素データ管理、炭素排出量削減のためのソリューションも開発しています。これにより、顧客はESGパフォーマンスの向上とネットゼロ移行に向けて、持続可能性の指標を追跡・改善することが可能となります。
GICは、2021年の同社のシリーズB+の資金調達ラウンドを支援し、顧客拡大や製品開発のロードマップを積極的に支援してきました。GICは、同社とともにプラットフォームのテストとフィードバックを行っており、GICの投資先企業を同社に紹介することで、顧客基盤の拡大を支援しています。GICは、アクティブな長期投資家として、ミオテックの企業構造やデータ・セキュリティへの取り組み等の課題について、株主価値の創出に向けた定期的な意見交換を行っています。
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